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2018/10/02 15:50

はじめに

日本では、江戸時代に幕藩体制が確立したことで、全国で地方独自の食文化が生れ、今でもその食文化は各地方に残っています。そのような中で食器も食文化に合わせて地方独自のものが生れ使われているものがあります。今回ご紹介する「こづゆ椀」もそのような器のひとつで、会津地方の郷土料理「こづゆ」に使用する漆塗の器として、地元では昔から親しまれている器です。

 

会津地方は、1590年に移封された蒲生氏郷公が漆器生産を産業として育てたことにより江戸時代には全国に広まり、今でも会津塗は全国に出荷されていますが、「こづゆ椀」は郷土食の器として地元中心に使用されており、全国へ広まることはありませんでした。

このように「こづゆ椀」は、限られた地域で限られたシーンでのみ使われてきた訳ですが、実はその独特の形状であるが故に、現代の普段の食卓で、いろいろな使い方が出来る可能性を秘めている器なのです。

 

会津漆器協同組合は、2013年、会津若松市で開催されたアートプロジェクトにおいて、蒔絵師が思い思いに絵付けをした「こづゆ椀」を「アート手塩皿」として地元の飲食店が使い様々な料理を提供するイベントを「ひとさらにくちづけて~感動!会津塗手塩皿でいただく会津のご馳走~」と題して実施するなど、近年地元では「こづゆ椀」の素晴らしさを全国に発信する動きが出始めております。

 

太陽漆器(株)では、このような動きを受けて「こづゆ椀」を全国の皆様に様々なシーンで使っていただきたいとの思いから「手塩皿」と名称を変えて紹介し販売しております。今回は、このような背景を持った会津塗の「こづゆ椀」の素晴らしさを少しでもお伝えできればと思います。

 

会津の郷土料理「こづゆ」と「こづゆ椀」

 

<「こづゆ」の材料>

<こづゆ>

 

器のおはなしの前に、簡単に「こづゆ」について触れておきましょう。「こづゆ」は、諸説あるようですが、もともと武家料理から派生し現在のかたちになったと言われています。少し前までは「煮肴」とも言われており、冠婚葬祭で出される料理です。昔会津は貧しい地域でしたので、冠婚葬祭の食事の席で出される料理は、ご馳走として家に持ち帰るように食べずに残しておき、「こづゆ」だけを酒の肴にしていたことから、「煮肴」と言うんだと地元の長老から伺ったことがあります。ですから、「こづゆ」は何杯でもお代わりができるように「大平」という大きな漆の器に杓子を添えて供されていました。

 

「こづゆ」の材料は、それぞれ家庭によって少し変わってきますが、基本的なものは、戻した干し貝柱、豆麩、銀杏、糸こんにゃく、きくらげ、椎茸、人参、里芋、三つ葉などです。おつゆは醤油と貝柱の出汁で味付けされた澄んで上品なお味です。このように「こづゆ」は煮ものではなくつゆものなのです。

 

「こづゆ椀」は汁椀より浅い器ですが、「こづゆ」はつゆものですので、器を手にもって口に付けてつゆをすすります。普通お皿であれば口につけてすすようなことは、料理中に味見をする時以外はしないと思います。

 

このように「こづゆ椀」は、「お皿以上お椀未満の深さ」という微妙な形状を持つ器で、口につけてつゆをすすることもできるユニークな器なのです。

 

はじめに「こづゆ椀」を「手塩皿」として使い方をご紹介

さてここからは、「こづゆ椀」を「手塩皿」に名称を変えて、弊社商品「手塩皿」のご紹介を致します。形状は木地師によって少し違いはありますが昔からの「こづゆ椀」と同じで、直径12cm(4寸)前後、高さ4cm前後です。尚、現在では「こづゆ椀」は無地のものが使われることが多いのですが、弊社では伝統工芸士や若手の会津塗蒔絵師に依頼して絵付けをしていただいた手塩皿を販売しております。

 

それでは、弊社の手塩皿を使用して料理を盛り付けた写真を紹介致します。基本的に使い方は自由です。サイズが丁度一人用にぴったりなので、小皿や小鉢として使用していただければ、お惣菜、スイーツ、お菓子など様々なものに対応できますし、汁ものもOKですので、鍋も取り鉢的な使い方もできます。様々な絵柄からお好きな手塩皿をチョイスして食卓に彩を添えていただき、楽しい食事を演出してみて下さいね。